ビュイックを1150ドルに値上げし、フォードがそれに倣う余地はたっぷり残っていました。
・・・たしかに、通常の財務分析では、フォードとしては過去にそれでうまくいった戦略をつづけることのほかに、それに代る納得のいく道はなかったのです。
ほとんどの評論家は低価格車には大きな市場はないと言い、それを製造する可能性など無視していました。
コストが高くつきすぎるからです。
さらに、個人所得は暖かい季節にしか使用できないような贅沢品を買うには低すぎました。
労働階級にはまだその時期ではなかったのです。
あのフォードの声明でさえ〈まあまあの給料〉の人間に限られていました。
自動車産業は近代経済学の用語でいう〈自然価格〉を見つけて、落着きかけているかに見えました。
ほとんどの製品には、本来コストをまかない〈妥当な〉利潤をあげる、ある決った価格というものがあると、経済学者は長い間信じていました。
それは会計士が計算ではじきだせるもので、結局はその価格に向って供給と需要が落ちついていくというのです。
ウイリー・デュラントは自動車は1910年にその点に達したと思いました。